遊園地





 あの修学旅行から1ヶ月。クリスマスを目前にした日曜日の今日は、俺の誕生日だからって秀ちゃんがデートに誘ってくれた。秀ちゃんも部活やら何やらで忙しくて、そこまで頻繁に2人っきりでデートする機会もなかったから、すごく楽しみだ。時計を見ると、待ち合わせ5分前。もうすぐ駅前広場に着く。


 (あ・・・・秀ちゃんだ・・・・・・)
平均よりちょっと身長高めで、ほぼ金髪に近い明るめの髪の秀ちゃんは、雑踏の中でも見つけやすい。秀ちゃんも俺に気付いたみたいだ。
「律、こっちこっち。」
秀ちゃんが手を振ってる。俺は小走りで近付いた。
「秀ちゃん、早いね。待たせちゃった?」
「ううん、大丈夫。ただちょっと寒くなっちゃったから、どっか入ってもいいか。」
ほら、と言いながら俺の頬に手を当てる。確かに結構冷えてしまっている。きっと早くから待っててくれたんだろう。
「もう、早く着いたんなら、先にどっか入っててくれれば良かったのに。ほら、行こう。」
何だか嬉しくて、ちょっと強引に秀ちゃんの手を取って目の前に見えているコーヒーショップへ引っ張って行った。




 「ところで今日はどこ行くの?」
秀ちゃんはコーヒー、俺は紅茶を頼んで席に着いた所で、俺は秀ちゃんに聞いた。
「金の掛かって無いもんで悪いけど、これ姉ちゃんから貰ったんだ。」
そう言って、俺に何やらチケットを渡す。・・・遊園地のチケットだ。
「バイト先で貰ったとか言って俺にくれたんだ。どうせなら律と行きたいと思ってさ。でも近所のだからショボいよな〜、やっぱり。どうせならディズニーとか、なぁ。」
照れ臭そうに言う秀ちゃん。何か可愛い。俺はニコニコしながら答えた。
「俺は秀ちゃんとならどこでもいいよ。久し振りだな、遊園地。楽しみ〜。」


 早速遊園地に向かった俺たちは、あまり大きくは無い園内を回りながら、とりあえず目につくアトラクションに乗ったり、適当にお昼を食べたりしながらゆっくりと楽しんだ。
 途中で秀ちゃんがジェットコースターに無理に乗って、ちょっと体調悪くなったりしたけどね。駄目なら駄目って言ってくれれば良かったのに。




 冬は日が暮れるのが早い。もうだいぶ日も傾いて、夕暮れ時だ。
「やっぱり締めはこれだよな。」
最後に来たのは一応この遊園地の目玉、観覧車だった。乗る時にさり気なく手を貸してくれた秀ちゃんの気遣いが嬉しかった。
「意外と景色いいね、ちょっと感動。」
朱色と濃紺の夕焼け空とちらほらと灯りをともし始めた街並みとが見慣れた風景を何だかロマンチックにしている。窓の外を眺めていると、秀ちゃんがぼそっと言った。
「日が落ちると寒いよな・・・。」
「うん、そうだね。昼間は結構あったかかったのに。」
秀ちゃんはがさがさとバッグから長方形の箱を取り出して、俺に差し出す。
「ちょうど良かった、これ。誕生日プレゼント。開けてみろよ。」
「ありがとう〜。」
そう言って受け取ったけど、ちょっとがっかり・・・。だって修学旅行の時・・・・・・・・

----------------------来月の律の誕生日は決まりだな。御揃いの指輪・・・。

 明らかに指輪の入っているような箱の形じゃない。でも秀ちゃんが俺の為にプレゼント選んでくれたんだから。リボンと包装紙を丁寧にはずして、箱を開けた。そこには深い紺色をしたスウェードの手袋が入っていた。
「これから寒くなるし、着けて帰れよ。」
「うん、ありがとう。」
箱から取り出して、左右を確認すると・・・。
「・・・あれっ??・・・・・・・・これって?」

 思わず手が止まった。手袋の左手の薬指に指輪がはまっていた・・・。驚いて顔を上げると、耳まで真っ赤にしながら、窓の外を眺めている秀ちゃんの横顔が目に入る。
「・・・・・・・・俺とお揃い・・・。」
そう言いながら、首元に覗いていたチェーンを持ち上げ、ペンダントヘッドをシャツの中から取り出す。そこには同じデザインで違った色の石がはまった指輪。
「同じもの、って思ってたんだけど、何か色が黒だとお前のイメージと違ってさ。店の人に頼んで換えてもらったんだ。俺の中での律のイメージは青とか紺なんだ。んでもって、これで金使いきっちまって、タダ券になっちゃったんだ、悪ぃ。」
恥ずかしいのか、早口で捲くし立てて、俺の顔をチラッと見る。確かに俺の指輪にはコバルトブルーの石がはまっていて、手袋ともよく合ってる。

 (・・・・・・・ちゃんと覚えててくれたんだ・・・。)
すごく嬉しくて、でもこんな女の子にするような乙女チックな事を考えてた秀ちゃんを想像すると、何だかおかしくて・・・。
「ふふっ・・ありがとう・・・ほんとに嬉しい。」
思わず笑って、向かい合わせで座っていたのを秀ちゃんの隣に移って、腕を絡めた。
「でも俺、もう一個欲しいものあるんだけどな〜。」
甘えるように腕に縋り付き、まだそっぽを向いてる秀ちゃんの顔を覗き込む。まだ顔が赤いみたいだ。
「えっ・・それ気に入らなかったか?」
ちょっと焦った顔をしながら、やっとこっちを向いた秀ちゃんに俺は・・・
チュッ-----------------
不意打ちでキスをした。



誕生日プレゼント、3つも貰っちゃった・・・。







おバカカップル第二弾。今回は律視点で書いてみました。律視点で見ると、秀がやたらと格好いい感じですが、 基本はヘタレです。
(back ground:『うさぎの青ガラス』様)


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