修学旅行





 今日は待ちに待った修学旅行。班行動では一緒だったけど、部屋割りはくじ引きで決められて、同じ部屋にはなれなかった。
(今日こそ律(りつ)に告白して、運が良ければその先も・・・)
そんな事を悶々と考えながら、俺は律たちの部屋の前まで来た。時間は夜の11時、上手くいけば他の奴らは部屋を移動してるかもしれない。ってか、律もいないかも知れないけど絶対探してやるっ。一つ大きな深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

「入るぜ〜。」
軽く聞こえるように能天気に声を掛け、ドアを開けた。
「あ、秀(しゅう)ちゃんやっぱり来てくれた。」
部屋の奥に設置されている応接セットに腰を掛け、何やら本を読んでるみたいだ。その近くのルームライトだけ付けてあるから、部屋はほんのり薄暗い。
(いきなり二人っきりか・・・。ちょっと気まずいかも。でもこのおいしい状況、この機を逃してなるものかっ。)
「あれ、他の奴らどうしたの?」
「うん、多分女子の部屋。ほら、彼女持ちもいるだろ。」
そう言いながら律は本を閉じ、テーブルに置く。その仕草も可愛い・・・と思ってしまう俺は相当重症だ。
「律は行かなかったんだ。」
「何か疲れちゃったし、秀ちゃんが来てくれるような気がしたから。とりあえず上がりなよ。」
(嬉しいこと言ってくれるじゃん。俺、幸せだ。)
にっこりと俺に向かって笑いかける律にどぎまぎしながらお邪魔します、と思わず言って俺は部屋に上がりこんだ。応接セットの一番近くに敷いてあった布団に腰を下ろす。



 俺の目線は釘付けになった。だって、腰を下ろした俺の目の前に丁度律の脚が・・・。そんじょそこらの女じゃ太刀打ち出来ないだろう、白くて細くて、まあとにかく美脚ってやつだ。旅館備え付けの浴衣ってのがちょっと残念だけど、それよりもその裾から覗く律の生脚に俺は見入ってしまっていた。
「そのピアス、そんな気に入ってくれた?ずっとしてくれてる。」
頭の上から律の声が降ってくる。当たり前だ、これは律からもらった誕生日プレゼント、好きなヤツから貰った物を喜ばない人間がどこにいるっ。俺は顔を上げて真面目な顔で答える。
「ああ、シンプルだから制服でもあんま違和感ねえし、何にでも合わせやすいし。ありがとな、ほんと。」
「どういたしまして。・・・何かこんな格好でいるのが変な感じがする。子供の時以来だね。でも秀ちゃんみたいに茶髪にピアスでも浴衣って意外と似合うもんだね。」

クスクスと笑って俺の姿をまじまじと観察している律。浴衣がハマり過ぎな位似合ってんのは律の方だ。俺みたいにいじってないちょっと長めの見事なまでのさらさらの黒髪、色白の肌、男にしちゃ華奢な身体。しかもこの色っぽい脚。これで興奮しなかったら男じゃねぇっ。
そんな事を考えていた俺の視界におもむろに組みかえる律の脚が入った。その時、ちらりと覗いた更に白い律の太腿にそれまで何とか保っていた理性が吹っ飛んだ。
「ちょっ・・・・秀ちゃん、何してんのさっ。」
律が驚いて声を上げた。無理も無い、俺は我慢できなくて律の脚に縋り付いたんだから。でももう止められなかった俺は、律の脚に口付け下へ滑らせて、足の甲にキスをおとし、足の指に舌を這わせた。
「こんな色っぽい律が悪い・・・。」
独り言のように呟いて、足の親指にディープキスするみたいに舌を絡ませる。
「秀ちゃん、やめっ・・・・・んっ・・・。」
耳に届いた甘い声に思わず顔を上げてみると、頬をちょっと赤く染めて目を瞑った律の顔が目に入った。

(うわっ・・・たまんねえ。下半身直撃のエロさっ!)

俺は律を無理矢理椅子から引き摺り下ろすようにして、自分が腰を下ろしていた布団に押し倒した。枕元のかごに入れてあった余りの浴衣の紐に手を伸ばし、仰向けになっている律の手を後ろ手に縛った。
「なにすんの、秀ちゃんっ!やめてよ、こんなっ・・・。」
背中から覆いかぶさりながら、綺麗なうなじにキスをする。俺は情けないことに興奮して荒い息を抑えられない。
「悪ぃ、とめらんねぇ・・・だって俺もうこんな・・・。」
わざと自分の勃ち上がったものが分かるように律の尻に押し付け、そのまま律の腹に腕を回し、腰だけ高く浮かすような姿勢にさせる。浴衣の裾を捲り上げ、下着を膝まで一気に下ろす。

「・・んっ・・・苦しっ・・ぃよ・・・・・・あっっ・・・そんなとこっ・・・・や・・んぁ・・・」
俺は律の後ろに舌を這わせながら、指をめり込ませていく。早く突っ込みたくて・・・。
「可愛い、かわいすぎる・・・。」
唾液でぐちゅぐちゅと音を立てて俺の指を銜え込む律を見てるだけでイキそうになった俺は我慢出来ずに思わず叫ぶように言ってしまった。
「律っ!!ごめんっ、まじでガマンできねえっっ!!!」
「ひぃっっ・・・・・ぁああっ・・・・」
まだちゃんと解れていなかっただろう律に一気に捻じ込んだ。律の口から引き攣った声が漏れる。俺は律をいたわる余裕も無く、絶頂を極める為に腰を打ちつける。
「・・・はっ・・律・・りつっ・・・・・好きだ・・りつ・・・・好き・・だっ・・・くっ・・・・・・。」
男の威厳も何も無く、あっけなくイッてしまった俺・・・とことん情けない。




 「・・ひっ・・・く・・・・」
すすり泣く声が聞こえて正気に戻る。俺、なんて事してんだよ。焦って律の手首を縛っていた帯を解く。俺はそのまま律の後ろで思わず正座。
「ごめんっっ!!!!ほんとにごめんっ!!・・・・・身体、大丈夫か?こんなヒドいことしといて、俺・・・。」
「・・・・・・・・もう一回言って・・・。」
ちょっと鼻声の律が言った。『もう一回』ってどれ言えばいいんだ?
「えっ・・・と『ごめん』・・か?」
「・・違う・・・・もうちょっと前の・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・あっ・・・『好きだ』?」
俺は相変わらず下を向いたまま、思いついた言葉を口にした。

 怖くて、情けなくて、顔が上げられない、律がどんな顔してるのか見られない。衣擦れの音が聞こえたと思ったら、俯いていた俺の視界に、律の細くて綺麗な指が伸びてきて、そのまま頬に添えられた。
反射的に顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは、律のどアップだった。思わず正座していた足を崩して、後ろにひいてしまった。
「それ・・ほんと?」
潤んだ目で俺の顔を覗き込むように言う。こんな時までヘタレててもしょうがない。俺は真剣な顔ではっきりと頷いた。
「いつから?」
俺の前で座り込んで、手は俺の頬に添えられたままだ。俺はその手の上に自分の手も重ね、真っ直ぐ律の目を見つめながら答えた。
「高校ンなってから。今日、ちゃんと告白しようと思ってたんだ。それなのに俺、いきなりこんな・・・。今までも何度かコクろうと思ってたんだけど、なかなか・・・・。」
(実は何回かカマかけてたけどスルーされてたなんて言えねえ・・・。)


 ふっと律が笑った。
「俺の勝ち・・・・。」
「えっ?!なんだそれっ・・・どういう・・・??」
今度は律が俯いた。どうも照れているようだ。さっぱり訳が分からない・・・。
「小学生の時から俺は秀ちゃんが好きだよ。だって、秀ちゃんは俺の王子様だもん。」
(・・・訳分かんねえけど、なんだこの可愛いイキモノはっ!!!俺を殺す気かっ!!)
「俺がイジメられてると必ず助けにきてくれた。強くてカッコ良くて、秀ちゃんのこと、大好きだよ。」
今思えば、多分ちょっかい出してたやつらは律の事が好きだったんだろうと思う。ガキ特有の好きな子をからかって気をひきたいってやつだ。

 俺は嬉しくて有頂天になりながらも、ここは一つ格好良く決めるべきだと頑張ってみる。いや、だって俺、王子様だぜ?
「来月の律の誕生日は決まりだな。御揃いの指輪・・・。」
俺は律の手を取って、お姫様にするように恭しく手の甲にキスをした。
(ああ・・・律のこのキレイな指に俺と御揃いの指輪が・・・。想像しただけでニヤけそうだ。)
「・・・・うん・・でもその前に・・・」
律はそう言って俺の首に両腕を回し、身体を預けるように抱きついてきた。
「今度はちゃんと・・優しくしてね・・・・。」
耳元で甘く囁かれ、俺は堪らず律の身体を抱き締めた。
「・・ああ・・・・」
 今度はちゃんと律も感じさせてやる。お互い気持ち良くなってこそのセックスだろ、と心に刻んで俺は律の身体を優しく布団へ押し倒した。







 秀が部屋に来る1時間程前-------。
(今日こそ秀ちゃんに好きって言ってもらうんだから。)
俺がこんなに秀ちゃんの事好きなのに、秀ちゃんが俺のこと嫌いな訳が無い。だって、秀ちゃんにコクってピアスを渡してたあの女への当てつけみたいにプレゼントしたピアスもずっと付けてくれてるし・・・。でも秀ちゃん、今まで何人か付き合ってた人いたし。やっぱり男の俺じゃ駄目かな・・・。
(こんな弱気じゃいけないっ!!秀ちゃん単純だから、ちょっと色仕掛けとかで・・・。よしっ!)

 「ちょっとお願いがあるんだけど。」
俺は相部屋になった、テレビを見ているクラスメート3人に声を掛ける。
「何だよ?」
「これで朝までこの部屋戻ってこないでくれる?」
そういって、一人に三千円ずつ渡す。
「女とシケ込む気かよ、和久井。」
「お前も隅に置けねえな。おい、相手誰だよ、教えろって。」
「そうそう、黙っててやるから教えろ。」


 「・・・・・・・・・誰に向かってそんな口きいてんの。」
俺は黒いオーラを隠さずドスの効いた声で言った。秀ちゃんが知らない俺。小学生の時イジメられっ子だった俺は、いつも守ってくれた秀ちゃんに憧れて、クラスが別になり、あんまり接点が無くなっていた中学時代に空手を始めた。
もともとの素質もあったのか、俺はあっという間に上達してすぐに黒帯、段持ちになった。実は今も続けている。
「三千円で大人しくバイトするのと、鼻ヘシ折られて押入れにブチ込まれるのとどっちがいい?」
にっこり笑いながら、俺は3人の顔を見渡す。
『・・バイトします・・・・。』
3人揃って引き攣った笑みを浮かべ、すごすごと部屋を出て行く。
「そうそう、それがいいよ。じゃあ、よろしくね。」
手をヒラヒラと振りながら、邪魔者を送り出した。
(さて、と。これから準備しないと。とりあえずシャワー浴びて、そうだっ!浴衣だね、ここは。)


 いそいそと準備を始めた律なのであった。







おバカ高校生カップルという設定で考えた二人。小悪魔ちゃんな所、というか 二面性のあるキャラって萌えますよね?ね?
ギャップのあるキャラにはとっても愛着が湧きます。
(back ground:『うさぎの青ガラス』様)


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