まるで猫のように 3




 「………………んっ……。」
「…気がついたか、大丈夫か?」
ベッドに腰を下ろし、咥え煙草で俺の髪を梳きながら尋ねてくる。俺、気を失ってたのか…。身体もいつの間にか綺麗に清められていて、シーツも換えられているようだ。
 どんだけ目が覚めてねぇんだ、俺。
 顔を見られるのが恥ずかしくて、タオルケットを引き上げる。でも、撫でられている髪は心地良くて、顔だけ隠すようにタオルケットをかぶせる。
「悪い、マジで無理させた。俺もこんながっつくと思わなかった……。まあ…こうなりそうだったから今まで抑えてたんだけどな。」
 学の言った『手加減』というのはそういう意味だったようだ。俺の早合点だったのか…。俺はそっとタオルケットから目だけを覗かせるように顔を出す。 そんな俺を見て、微笑んで煙草を燻らせながら、学は俺に訥々と話しだした。
「お前と付き合う前はヤリたくなったらてきとうな相手を見繕って、それで終わりって感じだった、男も女も。 透真と付き合いだして、てきとうな相手と出来なくなった、というかヤる気も無くなった。 お前とすることしか頭に無かったから。初めてお前抱いた時、正直戸惑った。 童貞のガキみたいにすげー緊張して…。」

 そこまで話して、一旦煙草を吸い、ゆっくりと煙を吐き出した。 学の端正な横顔を俺は見つめていた。
「男の俺に股開くなんて冗談じゃねえ、って突っぱねられたらどうしよう、なんてことも考えてた。 俺から誰かを好きになるなんて初めてだし、お前は男と経験ねえし、とにかくいやな思いさせたら マズいって必死で抑えた。二度とさせてもらえなくなったら困るとか思いながら。」
情けねえよな、と苦笑しながらそんな事を言った。 俺だって学以外の男に抱かれるなんて、想像もつかない。 学だから許した、学だから…。
 ああ、俺って愛されてんだな…。

 ふと目に入った学の肩甲骨辺りにみみず腫れのようになっている傷があった。 一瞬どうしたんだ、と思ったが直ぐに気が付いて顔が真っ赤になる。
「…背中、わりぃ……その…仕事で……困らない…か…。」
「ん?…ああ、大丈夫だ。この位、化粧でなんとでもなる。 俺の背中に爪立てながらイった時の透真、最高だったぞ。」
「なっっ!!ふざけんなっ!ばかっっ!!!!!」
背中の傷に手をやりながらとんでもない事を言いやがった。しかもまたニヤニヤして…。 俺は今度こそ頭の上までタオルケットをすっぽりとかぶり、学に背を向ける。 こいつ、どんだけ恥ずかしいんだよっ。


 すると、タオルケット越しに背中から抱き締められた。
「……もう次からは手加減しなくてもいいか?」
思ったよりも弱気な声。 俺を抱き締める腕に少し力が入った。
「………………今日は……満足、出来たのかよ…。」
俺は抱き締められたまま訊いてみる。
「ああ…初めて知ったよ、セックスがこんなに気持ちよくて、すげー幸せな気分になれるってな。」
学も同じ事思ってたのが嬉しかったけど、死んでも俺も、とは言ってやらない。 先に惚れた方の負けって言うし、学はこうやって俺だけかまってればいいんだ。
 それでもやぱっり嬉しくて、頭だけ覗かせて背中越しにボソッと呟いた。
「ちゃんと布団入れ…んで、頭撫でろ……それで許してやる………。」

 「………どんだけ可愛いんだよ、お前…。」
くすくすと笑いながら、俺の言いつけ通りに布団に入り、また俺を後ろから 抱き締めて頭を撫でてくる。
「透真は猫みたいだな。毛ぇ逆立てて怒ってるのかと思いきや、急にそっぽ向いて興味ねえって 態度取ったり、プライド高くて、でも頭撫でられんの好きで…。 どれだけ俺を夢中にさせんだ…。」
「…ちゃんとどっか行かねえように見てろよ、飼い主は……。」


 学の俺を包んでくれるような優しい声と大きな手がゆっくりと頭を撫でてくれているのがあまりにも気持ちよくて、 俺はそのまま眠りについた…。



 「……お前の面倒は俺が最後までちゃんとみてやるよ…好きだ、透真…。」






 いかがでしたでしょうか。
 ツンデレと言えばネコ、という安易な発想のタイトル(笑)。 私のツンデレ基準によると、90%近くがツン、残りがデレな感じ位がベストです。 しかも特別な相手の前でだけデレ発動、だけどもずっとデレじゃない、そんなもどかしい ツンデレ万歳。
 ちなみにこのシリーズに登場する百地由里ちゃんの格好は 私のファッションを元に書いてあったりします。 ええ、女王様なんです(笑)。
(back ground:『NEO HIMEISM』様)


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