鬼灯を携えて 2




 目線の先では逆さに持ち替えられた筆の柄が秘所に埋め込まれていた。滑らかな表面を持つそれは、ずぶずぶと俺の内にめり込んでいく。その様はあまりに卑猥で、居たたまれず目をそらしたが、ちゃんと見ていなさい、と美果様に命令されて、逆らえずに再び下肢へと目を落とす。ゆっくりと出し入れされると、内が擦られる感触と共に、濡れ光る筆の柄が出入りする光景が目に入る。
 自分が今目の当たりにしているはしたない姿を美果様にも見られていると思うと、余計に感じてしまう。視線でも犯されているかのようだ。
「随分と美味しそうに食べていますね。抜こうとすると締め付けてきます。」
浅く埋められたまま円を描くように入り口を広げる動きをされたかと思うと、角度を少しずつ変えながら内壁を擦られる。抉るように抽挿を繰り返されて、射精感が高まっていくのを抑えられない。
「みか様っ………駄目、です………俺、もぉっっ…。」
「出してごらん…こんな道具に犯されて、はしたなく喘いで射精する蒼太を全部見ていてあげるから……。」
「あ、ぁあっっ…………は、ぅん……。」
性器側の内を執拗に擦られて、俺は背を仰け反らせて放ってしまった。余韻が残っているままでずるりと筆を引き抜かれて、思わず声が漏れた。
 身体の向きを変えられて、美果様の膝を跨ぐようにして向かい合う姿勢になる。美果様は下から掬い上げるように俺の唇を奪うと深く重ねてくる。まだ息が整わないうち与えられた口付けで、頭の芯が痺れるような悦楽がこみ上げてくる。
一度放って満たされたはずなのに、官能を刺激されるような口付けを与えられて貪欲な心が頭を擡げる。
「ふっ、んん…みかさ……。」
自ら大きく口を開けて、美果様の舌を迎え入れ、自分の下で存在を主張する美果様の屹立に尻を擦り付けてしまう。これでもっと犯して欲しいとはしたなく求めてしまう。
「足りませんか?」
口付けの合間に甘く囁かれた言葉に身体の疼きが酷くなる。
「足りな……ぁ…もっと、もっ……と…ぉ…。」
「もっと…何ですか?言ってご覧……。」
口付けを外され、今度は戯れのように乳首をきつく吸われる。そこから広がる疼きに耐えられなくなって、美果様の頭を抱え込むようにしがみ付く。
「…もっ、と……奥まで…はぅっ……美果様の、で…犯して欲し……ですっ…。」
身体が求めるままに喘ぐようにして言葉を紡ぐと、思い切り抱き寄せられ、再び頭を擡げていた性器が美果様の引き締まった腹に擦られる。それすら感じてしまった俺は、それだけで声を上げてしまった。
 一息に突き立てられ、押し出されるように大きな声で喘いでしまう。そのまま揺す振られて、口を閉じる間も無くはしたない嬌声を上げる。
「もっと乱れてごらん…。」
「…ぃっ、あ………はっ…。」
美果様の声が聞こえたかと思うと、乳首に歯を立てられた。与えられる痛みと快楽に翻弄されて、自らも腰を振り、美果様を受け入れる。
「美果、さまっっ……ぁ、ああっ……。」
絶頂を目指し始めた所でいきなり引き抜かれたかと思うと、膝から下ろされた。しかし、立っている事等出来ずに椅子に座っている美果様の足元に跪いてしまう。

 熱を孕んだままの身体を途中で放り出された俺は、美果様の膝に縋り付くように身を寄せた。そこで目に入ったのは逞しくそそり立つ、今まで俺を犯していた美果様自身だった。
 まるで誘われるように手を伸ばし、そっと表面を撫でるようにして触れる。指先から伝わる熱さに身体が震える。美果様が俺を求めてくれている証のようで。
「上手におしゃぶり出来たら、あげますよ。」
上から降ってきた声に導かれて、おずおずと口元を寄せる。舌を差し出して、屹立を嘗め上げた。
 いつの間にか俺はその行為に夢中になっていた。舌を這わせ、口に含み、吸い上げる。こうやって奉仕する事に後ろ暗い悦びを感じている自分がいる。どんどん自分の知らない部分が美果様に暴かれていく事に快感すら覚える。
「み…さまぁ……ふっ、んんぅ…んむ……っ………。」
口に含んだままで下から様子を伺うと、目を細めて愛おしそうに俺を見つめている美果様と目が合った。徐に手が伸ばされ、俺の髪を梳くように優しく撫でていく。
「いいですよ…とても上手だ。」
まるで甘やかされているようで、堪らなく心が震える。美果様にとってこの俺の初めての口淫は、きっと稚拙で物足りないものでしかないだろうけれど。

 優しく頭を撫でていた手がふいに俺の髪を掴み、後ろに引かれた。俺は仰のいて、口を放した。
「ふ、ぁっ……。」
美果様は俺の口の端に伝う雫を指先で掬い上げて、俺の目を真っ直ぐ見つめたまま唇をなぞる。
「御褒美、あげましょうね。」
その言葉に媚びるような目で応えてしまう。
 腕をつかまれ、少し乱暴に寝台へと連れて行かれる。殆ど肌蹴ていて意味を成していない浴衣と帯とを剥ぎ取られ、寝台に転がされた。美果様の前で一糸纏わぬ姿を晒しているのが恥ずかしくて自分の体を丸めて視線から逃れようとする。
 しかし、思わず目を奪われて固まってしまった。美果様が俺の上で膝立ちになり、俺と視線を交わしたまま自分の夜着を脱ぎ捨てていく。次第に露わになるその体に釘付けになる。抜けるような白い肌、筋肉の乗った美しい裸体。薄い陰影を浮かべる肢体はまるで絵画から抜け出てきたようだ。
「美果様………。」
この人に自分を捧げる事が出来るのかと思うと、悦びに包まれる。誘うように両腕を伸ばし、心も身体も美果様を求めているのだと全てで示す。
 そんな俺を見て、美果様は目を少し眇めてから、俺の身体を包み込むように抱きすくめた。

 「そんな風に誘って……悪い子だ。」
嘯くように耳元で囁かれたかと思うと、熱い肉塊が押し当てられて時間を掛けて挿入される。じりじりと内壁を広げられていく感触に身震いが起きる程の快感を覚える。足りなかったものをゆっくりと満たされていくのも堪らないが、それだけでは治まらない衝動が湧いてくる。
「あ、あっ…もっと、下さ、ぃ……みか、さまぁ……。」
美果様の背中にしがみつきながら、自ら腰を浮かせて更に深く欲しいと強請ってしまう。
「もっと?どんな風に?」
首筋に唇を押し当てたまま問われて、甘い声を上げながら答える。
「…っ…さっき、みたいに……もっと激しく、突いて欲し……です……。」
足を肩に担がれて、折り畳まれるような体勢にされるが、その苦しさにこれから先、与えられるであろう途方も無い快楽に期待する自分がいる。
「痛いのも、苦しいのも好きなのですか?」
「あぅっ…好き、です……美果さまにされること、全部好き……。」
苦しさに必死で息を継ぎながらも美果様に応えた。
「愛していますよ……。」
笑みを湛えた唇が軽く俺の唇を掠めたかと思うと、いきなり激しい抽挿が始まった。
「ひぁあ、あっ…あう、ぁ……っ…は………あ、んっ…。」
揺さぶられるままに律動と共にはしたない喘ぎ声を上げてしまう。口の端から涎が伝っていくのが分かるが、飲み下す余裕等無い。
「ほら…もっとよくしてあげますよ…。」
「…ぃや、ああっ……はう…み…さま、美果さまっっ…。」
激しい律動で責められ、心までも揺さぶられて、美果様の身体にしがみ付く。強く抉られて、絶頂感が押し寄せてきた。
「も、もぉ…ん……ああ、あぁん…ああっ………ふぁ、あ…。」
「……っ…はっ……。」
達した事で思い切り締め付けて、美果様も俺の内で絶頂を迎えた。最奥で放たれた熱い飛沫にも感じてしまい、声を漏らした。身体は完璧に弛緩し、しがみ付いていた腕を敷布の上に投げ出す。口の端を伝った雫を舌で掬われ、軽く唇を食まれた。
「ん…ふ、ぅ……。」
達したばかりで敏感な身体に施される愛撫。先程も弄られた乳首を爪で弾かれ、まだ美果様を銜え込んだままの箇所がひくりと収縮する。指で捏ねるように押し潰されて、痙攣するように全身が小刻みに震えてしまうのを抑えられない。達して満たされたはずの身体が美果様の柔らかい愛撫で、再び熱を孕んでいく。自分ではどうする事も出来ない衝動が奥底から滲み出てくる。その証拠に、俺の内で力を取り戻した美果様の肉を締め付けてしまう。

 「まだ足りないのでしょう?」
そう言って、一度引き抜かれ、無造作に体の向きを変えられた。腹の下に腕を入れられて、膝を立てるように促され、四つん這いになる。
「こんなに赤く潤ませているのに……。」
笑みを含んだ声音で告げられ、悪戯に穴の淵を指先でなぞられた事でびくりと体が跳ね、先程注がれた体液が太腿を伝い落ちていく。
「ああ、零れてしまいましたよ。」
「…っぁ……あ、ぁ……ごめんな…ぃ……。」
肌を滑り落ちていく感触にも、そこに注がれている美果様の痛い程の視線にも感じてしまい、震えた声で小さく喘ぐ。恥ずかしくて堪らないというのに、欲しがる心は止められない。
「もっとたっぷり注いであげないといけませんね。」
「は、はぃ……お願い、します……もっと、いっぱいにして…くださ、い……。」
枕に顔を埋めながら穿たれる期待に自ら尻を高く掲げる。
「蒼太……。」
優しく名前を呼ばれると直ぐに突き立てられて、嬌声を上げながら俺は美果様に全てを預けた。



 「……ん…………。」
ふと気が付いて、ぼんやりと目を開けた。
 夜明けが近いのか、白み始めている外の明るさを受けて、陰影を浮かべる美しい横顔が目に入る。閉じられた瞼を縁取る長い睫毛や高く形の良い鼻梁、軽く引き結ばれた少し厚めの唇。
 全てが神々しいまでに美しい。
 しかし、徐々に覚醒してきて、こんな風にしていてはいけないと思い至る。どうやらあのまま寝入ってしまったらしい俺は何も身に着けていない事に気付き、枕元に放り出されている浴衣を手に取り、そっと体を起こした。美果様の眠りを妨げないように、と。
「どこへ行くのです?」
少し掠れた声が聞こえ、再び美果様の腕の中へ引き戻されてしまう。
「すみません、美果様。」
慌てて謝りの言葉を口にしたが、返されたのは額への口付けだった。
「まだ早いでしょう。」
抱きすくめられ、胸に顔を埋めるようになる。美果様の肌が頬に触れるのが恥ずかしくて、逃れようと試みたが、確りと肩を抱かれていて顔を背ける事も出来なかった。
「あの…離して下さいませんか……?」
無駄だと分かりつつも小さな声で尋ねてみた。
「嫌です。私はまだ蒼太とこうしていたい。」
顎を掬われ、仰のいた所で唇を軽く啄ばまれた。
「私と一緒に居て下さい。」
甘い台詞を囁かれ、胸が熱くなる。
「で、でも、俺、仕事が……っ…。」
それ以上、言葉を繋ぐ事が出来なかった。背骨に沿って掌が滑り降り、腰を辿り、尻の膨らみを撫でていく。
「今日はこのまま、私の腕の中に閉じ込めておきましょう。」
冷笑を浮かべる美果様の瞳に捕らわれて、動けなくなってしまう。
「美果、さま…。」
吐息と共に名前を呼べば、思い切り抱きすくめられた。
「………逃がしませんよ。」
再び施され始めた愛撫に身体に燻る火を付けられてしまう。波にさらわれて溺れていく様な感覚に襲われ、もがきながら美果様の背にしがみ付いた。




 やっぱりエロの長い百花繚乱カップル。あれもこれもネタを取り入れ過ぎた結果、この長さのエロのみになってしまいましたとさ。
 まあ、いいですよね。この二人なら。ちなみに鬼灯の花言葉『私を誘って下さい』。
 誘い誘われな二人。
(back ground:『NEO HIMEISM』様)


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