change you, change me7




 開き直ったつもりでもまだ心のどこかに小さな不安があって、俺は恐る恐る唇を重ねた。少しかさついた、でも熱い唇。軽く触れ合っただけなのにどうしようもなく胸が高鳴る。一度離れて、少しだけ間を置いてもう一度。そうしたらいきなり背中が軋むほど強く抱き締められた。
「……ん…っ……ぁ、…っ…。」
角度を変えながら何度も何度もキスされる。柔らかく唇を食まれ、吐息を漏らす。
 その隙間をぬうように保坂さんの舌が入り込んできて、俺の舌先に触れた。誘い出されるように舌を差し出すと、優しく吸われて腰の奥のほうがずくりと疼いた。保坂さんの身体にしがみついて、震える指でTシャツをぎゅっと握るとそっと唇が離れていった。
 肩口に額を擦り寄せたら保坂さんが俺の髪を優しく梳いてくれている。
「…………ベッドに……。」
言えたのはそれだけだった。

 狭いシングルベッドで向かい合わせで抱き合いながらついばむようなキスを交わす。薄いTシャツ越しに感じる保坂さんの背中。俺を圭介からかばってくれた時の事を思い出してしまい、愛おしくて堪らなくなる。意外と逞しい広い背中を確かめるように、ゆっくりと手を這わしていく。肩甲骨が手の平に納まる感じが絶妙で、何度もそこを撫でてしまう。
 俺の腰に添えられていた保坂さんの手も俺の動きに合わせるみたいに背筋をなぞり、肩甲骨の辺りをくすぐっていく。脇腹を撫で上げられて俺はつい身を捩った。その拍子に優しく肩を押されて、気が付けば保坂さんの顔を見上げていた。
「吉高さん……。」
少しだけ掠れた小さな声で名前を呼ばれた。それだけでまた心拍数は跳ね上がる。こんな風にキスして、触れている相手がちゃんと俺だと分かってくれているんだ。嬉しくて、幸せで、胸がいっぱいになって保坂さんの首に腕を回して目を閉じる。俺の願いどおりにキスが下りてきて、薄く口を開けばそれはすぐに深いものに変っていく。歯列をなぞり、舌を絡ませ合う。
「ん、……んぅ…ぁ……は、…っ……ぅ………。」
喘ぐような吐息が漏れてしまうのを止められない。口付けから解放されて、大きく息を吐くとそっと頬を撫でられる。その手の平に鼻先を擦り寄せたら、耳朶を優しく食まれた。
 耳元に感じる息遣いと共に耳の形を舌でなぞられて、肌が粟立つ程に感じてしまう。頬に添えられていた手が首筋から肩へ、鎖骨へと這わされる。息が上がって、大きく上下している胸を撫でられて、すでに兆し始めていた胸の突起が芯を持つ。やがて保坂さんの手は下腹まで辿り着き、Tシャツの裾から忍び込んできた。
「……や、ぁぁっ…んんっ………っ…。」
指先で乳首をこねられて大きな声が出てしまって、思わず自分の指を噛んだ。
「………いや、…ですか?」
ピタリと動きを止めて、真剣な顔で訊かれてしまった。
「…いやじゃない、です……その………恥ずかしくて…………。」
手を掬われて、人差し指の第二関節にキスされた。俺が噛んでしまった所をいたわるようなキス。荒れてあかぎれになっている自分の指先が目に入った。
「俺の手、汚いから……。」
あんまり見られたくなくて保坂さんの手を解こうとしたけれど、逆に引き寄せられて手の甲に唇を押し当てられた。
「仕事を頑張っている証拠だ。大事な指、噛んだら駄目ですよ。」
言い含められて、握りしめていた手はシーツに縫いとめられた。
「…保坂さん………はっ、…ぅ……ぁんっ……あ、ぁぁ………。」
保坂さんは俺の胸に顔を伏せると、濡れた舌先で乳首を舐めてくる。くすぐられ、捏ねられて、我慢していた声が止められなくなっていく。保坂さんの手を握り返しながら、胸から広がる快感に身体を波打たせた。
 きゅっと芯を持った乳首を吸い上げられて、とっくに下着を押し上げて硬くなっているところの先端が濡れてきたのが自分で分かる。
「あっ………それ、…ぁ……気持ちいいっ………あぁ…。」
思わず口をついた言葉に恥ずかしくなる。でも、それがより深い快感を呼び起こす。逆の乳首にも吸い付かれ、俺は胸を突き出すように背を反らす。保坂さんの唾液で濡れた乳首をつままれて、押し潰されて、その刺激に身もだえる。知らずと涙が滲んでいて、視界がぼやけていく。気が付けば弄られていなくてもじんじんと疼いてしまうようになっていた。

 首にまとわりつくだけになっていたTシャツに手を掛けられて、俺は素直に従ってそれを取り去る。保坂さんも上半身を起こして、自分でTシャツを脱ぎ捨てた。
 薄く割れた腹筋も軽く盛り上がった胸も格好いい。俺は自分から身体を起こし、保坂さんに抱きついた。しっとりと汗ばんだ肌から微かに保坂さんの匂いがして、首筋に顔を埋める。背中に回した掌に皮膚の下で動く筋肉を感じて、俺はどうしようもなく欲情していた。
 首や鎖骨にキスをしながら、俺は保坂さんの下肢へと手を伸ばしていった。服の上から触れたそこはすでに勃ち上がっていて、形を確かめるように掌で撫で上げると俺を抱き締めている保坂さんの腕にぐっと力が入った。俺はそのまま下着の中に手を滑り込ませた。そっと包み込んで、少しだけ動かしてみる。
「…っ……ぅ、………。」
つむじの辺りを保坂さんの熱い吐息がかかる。もっと感じて欲しくて、動きを早くしていくと手の中の塊は更に熱く、硬さを増していく。
「あっ、…保坂さ………そんな、こと……あ……はっ…。」
背中や腰を這いまわっていた手が俺の下着の中に潜り込んできて、止めようとその腕を掴んだけれど力なんかほとんど入っていなかった。保坂さんは俺の抵抗なんてものともせずに、俺のモノを握り込んだ。保坂さんが手を動かすと、すでに先走りを零していたそこからくちゅりと小さな水音がたつ。強弱をつけて握り込まれ、扱かれてその愛撫に夢中になっていく。
「…あ…ぁっ………ダメ、です……はなし…て………俺、おれっ……」
俺から誘って、全部俺のせいでこんな事になって、そう思ってもらわなきゃ、とか考えていたのにもうそれどころじゃない。少し擦られただけでこんなに良くてたまらない。俺は顔を伏せて身体を震わせるしか出来ない。
「……っ、…我慢、しないで……。」
「ぅ……ん、…はっ…………ぁんっ…あぁっ…っ、…………。」
耳元で囁かれて、せり上がってくる熱にぎゅっと目を瞑る。裏筋を擦られ、先端を指の腹で弄られて、俺はあっけなく放ってしまった。肩を揺らしながら息をつき、ぼんやりとした頭が徐々にクリアになっていく。
「………ぁ、…ごめんなさ…ぃ……手、…手を……。」
枕元に投げ出してあったタオルが目に入り、俺が汚してしまった保坂さんの手を取ってわたわたと拭う。
「あやまらないで下さい。俺がしたくて、した事ですから……。」
タオルごと手を握られて、顔を上げるとばっちりと目が合った。頬を緩ませ、まるで愛おしいものを見るように目を細めている。初めて見る表情にどうしようもなく心を揺さぶられた。

 本当に、この人のことが好きだ。
「俺も…………したいこと、してもいい…ですか……?」
保坂さんの下から脚を抜いてうずくまるようにして、体勢を低くしていく。ルームパンツと下着を引き下げて、さっきまで触れていたモノを取り出した。硬いままの根元に手を添えて、先端に口付けた。幹にもキスをして浮いた筋にも唇を滑らせていく。
「…っ……吉高さん………。」
聞こえてくるささやかな声と息遣い。ふわりと頭を撫でられて、俺は口を開いた。
「……んむ……ん、んっ………ぅ…っ………」
ゆっくりと喉の奥まで咥え込んだ。それでも納まり切らないほど、保坂さんのモノは大きくなっている。ゆるゆると頭を上下させながら、口全体で吸い上げる。髪を梳いてくれていた手が頬を撫で、指先が耳をくすぐっていく。
 一度口を離して大きく息をついてから、舌を差し出して裏筋を舐め上げていく。
「はぁ……ぅ、………ん…ふっ………ぁむっ……。」
舌を尖らせて、先端をくじりながら幹を少し力を込めて扱いていると、先走りが滲み出てくる。それを味わいたくて、俺は亀頭を咥え込み、舌を絡める。
 少し目線を上げると腹筋が微かに動く様が目に入り、感じてくれているのが分かる。その反応を見ながら手と口で一所懸命奉仕していく。その間も保坂さんは俺の髪を優しく梳いてくれている。
 (コレ、挿れられたら、俺……どうなっちゃうんだろう………)
ふと頭に過ってしゃぶりながらまた勃ち上がり始めていたモノがぐんと硬くなった。それに合わせて後ろが、下腹の奥の方が、きゅんと疼いた。

 充分に育ったモノから口を離し、邪魔な服を全て取り去る。俺はベッドサイドにいつも置いてあるハンドクリームを手に取った。たっぷりと出したクリームからほのかにハチミツの香りがする。その甘い香りで普段はリラックスして眠りにつくのに、今はとてもいやらしいものに感じてしまう。
 前屈みのまま後ろへ手を伸ばす。クリームを塗り広げていき、指の腹でそっと入口に触れた。
「……ぅ、…は………ん…ぁっ…んん…………。」
少し触れただけなのにひくりと震えたソコに指先を埋めていく。身体も心も保坂さんを欲しくなってしまっていて、どんどん指が吸い込まれていってしまう。自分の肩で口を塞いで声を抑えようとするけど、それもままならない程感じてしまっている。
 いきなり正面から抱きすくめられ、背中に回された手が背筋を伝って下りてくる。その指先が後ろの窄まりまで届き、指を咥え込んだ穴の淵をなぞっていく。俺のソコに指が入っているのを確かめるように、指先がぐるりと一周、円を描いた。
「…もっと濡らしたほうがいい……。」
背後でパチンとキャップを開ける音がして、クリームを尻の狭間に垂らされた。
「あっ……ぁあ…保坂、さ……っ……。」
クリームを掬い取った保坂さんの指がじりじりと俺の中に入ってきて、たまらず声を上げる。俺が指を動かすと、そのあとを追うみたいに保坂さんの指も俺の中で蠢く。
「痛くないですか…?」
「痛くない、で……す…ぁ、…いぃ………あっ…んぁっ………。」
自分の指をもう一本足して、入口を押し広げていく。早く欲しくて、根元まで押し込んで中をかき回すと湿った音が耳に届いて、自分でも分からないままに保坂さんにしがみつきながら腰をくねらせていた。
「…あ……もぅ、欲し…い…っ………」
指を引き抜いて保坂さんの耳に噛みつくように懇願する。どさりとベッドに押し倒されて、唇を奪われた。深く激しい口付けに眩暈がする。後ろに熱い塊が押し当てられる。
「っ、…ンっ………ふ…ぁっ……んぅッ………はんッ………。」
舌を絡め取られながら、ゆっくりとナカを広げられていく。熱い肉が俺の内側をじりじりと犯していく。
 全てを収めると大きく息をつきながら、いたわるように俺の肩を、腕を、脇腹を手の平で撫でてくれる。浅い呼吸を繰り返して忙しなく上下する胸に手を這わされ、さっきたっぷりと愛された乳首を指先でこねられる。
「ふぁっ……はッ、ぁ………アッ……。」
ぷっくりと膨れた乳首を弄られると、保坂さんを咥え込んだ所が物欲しげにヒクついてしまう。余計に保坂さんの形も大きさもはっきりと感じてしまう。
「大丈夫、…だから……動い、てっ……くださ、ぃ………あぁぁっ……ッ…。」
保坂さんがゆっくりと腰を引き、また深く入ってくる。段々と抽挿は早くなっていき、俺は保坂さんの首筋に縋りつく。カットしたばかりの髪が指の股をくすぐるのさえ気持ち良い。
 もっと深く繋がりたくて、自分から腰を浮かせると左脚をすくわれて肩に担がれる。
「アッ…きもちい……保坂さんっ……ほさ、かさ……ッ…あんっ…ぅ、…はッ……。」
揺さぶられながら声を漏らした。ナカを抉られ、保坂さんの腹筋に擦られて完全に頭をもたげている自分のモノに手を伸ばす。
「…ぁ、…おれ、もぅっ…イキた、いっ…ァッ、出ちゃ……っ……イクッ……あっ、ん、アアッ……ふッ…う…。」
突き入れられる動きに合わせて手の中のモノを扱くと、絶頂はすぐそこだった。自分の腹にパタパタと精液が落ちる。尾を引くような絶頂に仰のいた俺の唇の端にキスを一つ落とすと、保坂さんの鼻先から汗がぽたりと俺の頬を滑っていく。
「俺も、イッていい……ですか…」
押し殺したようなセクシーな声で言われて、俺は微かに頷いた。力が抜けてシーツに投げ出していた手に保坂さんの熱い手が重ねられ、指を絡めるようにぎゅっと握られた。途端に強く腰を打ちつけられ、その高みを目指す激しい律動に小刻みに喘いでしまう。
「吉高さん、…吉高さんっ……ぅ、くっ…あ…………はッ……は、ぁ…………。」
俺のナカから突然圧迫感が消えると、熱い飛沫が俺の腹と胸に散った。